たいらくんの政治経済。

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2014/08/25

革新的なデジタル世代の海外旅行へようこそ

デジタル世代の海外旅行はこうも美しく効率が良い

アメリカの研究者マーク・プレンスキー氏が生み出した、デジタルネイティブという言葉。生まれながらにITに親しんでいる世代のことを指すが、この世代において最も中心的な役割を果たしてきた1990年以降に生まれた世代は、情報の在り方や消費行動だけでなく、この世界そのものを変えようとしている。

広大なインターネット世界での移動手段となるデバイスを手に、情報の大海原を縦横無尽に駆け巡る彼らの中には、現実の世界さえもインターネットの力を借りて自由に旅する人々も決して少なくない。

そもそも、海外旅行自体が既に珍しいものではなくなった。国連世界観光機関の公開統計情報では、2012年に観光目的で外国を訪れた人々の数が10億人に達したことが明らかにされている。アメリカ国勢調査局の推計では、同年3月頃の世界人口が約70億人に到達したと見積もられていたので、全世界の7人に1人が2年前に外国を訪れたことになる。

今や多くの人々に愛されている海外旅行。慣れ親しんだ母国とは全く異なる環境を見て回ることは、それだけでも十分意義のあるものだが、異なる環境であるが故にトラブルも少なくない。場合によっては、経済的・物理的損失を伴う犯罪に巻き込まれてしまう可能性さえもある。

言葉も違えば文化も考え方さえも違う渡航先での日々は、往々にして非効率で経済性に乏しくなる場合が多いが、そんな中、前述のデジタル世代は、常に革新的な手段を用いることで海外旅行の在り方さえも根本的に変え続けている。

金銭的な余裕のあったバブル世代のように、海外といえばハワイとグアムのような南国リゾートを思い浮かべて、比較的高めに設定された手数料も宿泊費も気軽に支払えるような時代はもうずっとずっと昔の話。今となっては、もっと自由に、もっと手軽な価格で様々な国を訪れることができるようになった。どの国の、どの場所に行けば、最も自分が思い描いてきた旅行プランに近付けられるか、異国の地に思いを馳せつつ具体的なルートや宿泊先、訪れるべき観光名所等の情報を自ら少しずつ集めていくことは、こうした新しい海外旅行の楽しみ方を満喫する上での必要な下準備となる。

それでは、そんなデジタル世代の海外旅行の仕方とはどのようなものか、東欧を旅する中で出会った達人級のバックパッカー達との会話を通して知り得た情報の中で明日にでも使えそうな位実用性の高いものをいくつか紹介したい。

まず、必要となるのが航空券。バックパッカーの多くは、格安航空会社やフラッグキャリア等主要な航空会社が提供している航空券の中で安い順に表示してくれるスカイスキャナー(www.skyscanner.jp)やエクスペディア(www.expedia.co.jp)を利用している。渡航予定日を予め決めていれば、可能な限り早めにこうしたサイトで航空券を確保することで、正規運賃よりも安く購入することができる。

パリ行きの航空券もこの価格から
ただし、大抵の格安航空券には厳しい条件があり、キャンセル時の返金対応が不可能であったり、渡航日の変更等自体ができないケースも少なくない。加えて、機内持ち込み手荷物以外の荷物については追加料金が請求されることもあるので、購入時には航空会社のホームページを確認しておいた方がいい。追加料金が必要な場合は、航空券の予約時に合わせて預入荷物分の料金を支払った方が、カウンターで支払うよりも半額程度安くなる。

また、一部の格安航空会社(Air Asia等)は自社ウェブサイト上のみ一定期間特別割引キャンペーンを実施することもあるので、スカイスキャナーだけに頼らないことも航空券代を低く抑える確実な方法となる。

今では、多くの航空会社がeチケットを発行するようになり、昔のような紙の航空券を受け取る必要がなくなってきている。一部の航空会社は、自社のスマートフォンアプリをダウンロードすることで、航空券情報をアプリで確認できるようにしている。

easyJet社のアプリ画面
例えば、easyJet社であればこんなにスタイリッシュで可愛いアプリが用意されている。

次に、宿泊先。宿泊先については、安全性とサービス内容が殆ど画一的になっている旅客機と異なり、値段が低すぎると思いもしなかったトラブルや利便性の低さに直面することになるのでやや厄介だ。そこで、活用したいのがブッキングドットコム(www.booking.com/index.ja.html)。 このサイトでは、実際に宿泊したユーザーらによる豊富なレビューと宿泊施設の写真画像が大量に掲載されているので、ホテル側の過度なアピールや不利益な情報さえも事前に知ることができる。 

豊富な画像やユーザーレビューはとても参考になる
もちろん、料金順に表示することもできるので、予算を考慮しつつ安全性やアメニティの豊富さ、立地条件や朝食の有無等、個人的な条件に合わせてホテルを探すことも簡単だ。大抵、旅先には多くの荷物を持っていくことになるので、駅や空港からの距離やホテルまでの送迎サービスの有無も知りたいところ。こうした重要な情報は全て、Booking.comで詳細に知ることができる。 

こうしたホテル情報サイトで注意したいのは、基本的な情報はホテル側が掲載していることが多いという点。宿泊施設そのものの写真よりも周辺の観光地や公園等の写真ばかりが掲載されている場合は要注意。知るべきなのはホテル自体の写真なので、あえてこうした直接的に関係のない写真を多く掲載しているホテルは、設備が悪かったり、部屋が驚くほど狭くて不便だったりする。 

そして、レストラン情報。渡航先の楽しみの1つである食事。宿泊するホテルからの距離や価格、メニュー内容等も全て、トリップアドバイザー(www.tripadvisor.jp)で知ることができる。このサイトには、ホテル情報や観光地情報も掲載されているので、ホテルを選ぶときに、Booking.comと組み合わせて活用すると便利だ。 

美味しいレストランならトリップアドバイザーで探そう
トリップアドバイザーでは、ランキング形式でレストラン情報が掲載されており、ジャンルや価格帯に応じて分類することもできるので、その日の気分や好物に合わせて美味しい食事をとることができる。 

トリップアドバイザーにも、他のサイトと同様なレビュー機能が搭載されているので、料理そのものの感想はもちろん、レストランの雰囲気や従業員の様子も事前に調べることができる。もっとも、料理については、個々人で考え方や感じ方が大きく異なるので、ホテル選び以上にリスキーな選び方をしてもいいかもしれない。 

トリップアドバイザーは、観光地情報も詳細に掲載されているので、単なるレストラン選び以上の活用方法がある。もちろん、こちらもランキング形式で情報を見比べることができるので、とりわけ有名観光地の多い大都市に旅行するときには、貴重な情報源となる。

これら全てのウェブサービスは、日々ユーザー有志による情報交換や運営会社による更新によって日毎に新しい情報が掲載されるため、信頼性・正確性が高い。もっとも、旅先でこうしたサービスを利用するためには、宿泊施設にインターネット回線がある必要があるが、今どきどのホテルも無線LANや自由に使えるコンピュータ 設備を完備しているため殆ど問題にならない上、渡航前に十分に調べておいて、必要な情報だけオフラインでもアクセスできるようにブックマークしておけば完璧。 

長らくの間、旅行客の必須アイテムとして絶対的地位を確保していたガイドブック地球の歩き方も依然として貴重な情報源にもなるので、こうしたアナログ時代の便利グッズも組み合わせれば、よりスムーズな旅行を楽しむことが出来る。 

この他にも、渡航先の公共交通機関の情報や切符の予約等が行えるウェブサイトも数多く存在しており、複数の都市や国を訪れる場合に有効に使えばより手軽に移動することができる。もっとも、多くは英語を含む複数の外国語に対応しているが、日本語に対応しているサイトは少数派なのが現状だ。 

そして、最も重要なのが現金とクレジットカード。犯罪や無用なトラブルに巻き込まれないためにも、確実に管理したい。海外旅行者の多くは、多額の日本円を渡航先に持っていき、現地空港にある両替所で現地通貨に交換するが、空港の両替所はほぼ確実にレートが不利である上に、そもそも多額の現金を持ち歩くこと自体、避けるべきこと。 

実は、デジタル世代の旅行者で最も先進的で洗練されているのが、現金の扱い方。最も安全で確実なのは、海外でも使えるクレジットカードとある程度の現金を組み合わせる方法だが、海外ではクレジットカードよりも口座から直接引き落とされるデビットカードの方が人気だったりする。日本でも、デビットカードを取り扱っている銀行がないわけではないので、関心がある人はチェックしてみてもいいかもしれない。 

デビットカードでは、口座に入金している金額以上のお金を使うことができないため、クレジットカードでよくある複数購入処理詐欺や法外な額の請求を避けることができる。もっとも、口座に多額の現金を入金していては意味がない。そこで、旅行用の別口座を準備した上で、カードと組み合わせると有効なウェブサービスがペイパルだ(www.paypal.jp)。 

PayPalで現金を安全に管理できる
ペイパルでは、ネットバンキングのようにネット上のアカウントに現金を保管することができる。ペイパルのアカウントとクレジットカードもしくは銀行口座の情報を紐付けることで、安全に現金を管理することが出来る。 

例えば、30万円が現地で使う予算であるとすれば、30万円全額を財布に入れるのはかなり抵抗がある。そこで、現金としては5万円程度を財布に入れるようにして、残りの25万円のうち20万円はペイパルのアカウントに保管、銀行口座に5万円に保管しておけば、テビットカードで5万円以上の購入ができないため、詐欺やトラブルに遭っても被害を最小限に抑えられる上、ペイパルから銀行口座にお金を移すのには時間がかからないので、使った分だけペイパルから移せばいい。こう考えると、海外旅行をする上で最大のパートナーはクレジットカードというよりもデビットカードのように思えてこないだろうか。 

クレジットカードについても、上限額を事前に設定しておくことで、安全性を高めることができる。とはいえ、どんなに安全性を高めたところで、被害に遭ってしまえば幾分の経済的損失を被ることになるので、日頃から意識しておくことが何よりも重要になる。 夏休みに海外旅行をした人も、できなかった人も次なる長期休暇である冬休みに向けて、これまでの旅のスタイルを改善するのは今からでも決して遅くない。

それに、アナログ世代生まれでも、こうしたデジタル世代と同じようにインターネットを活用した効率的な海外旅行を楽しむ人も現れてきた。このようなアナログ世代のデジタル移行のことを、前述のプレンスキー氏はデジタルイミグラントと呼んでいるが、デジタル世界へのイミグレーション自体はアメリカの入国審査よりも遥かに簡単で恩恵が大きい。 

ここまで読んだなら準備は万端。さぁ旅をしよう!

2014/08/22

もう一歩先の観光大国、日本へ

日本の駅や観光施設の英語表記は十分?

ロンドン大学の研究機関で稼いだ給料を惜しげも無く注ぎ込んだ東欧旅行も今日で21日目。チェコの首都プラハは特に気に入ったが、今滞在しているポーランドも物価がとても安くて過ごしやすい。東欧の気候は8月でも日中の気温が25度程度で、日本の猛暑を伝えるニュースを見る度にまるで異世界にでもいるような気分になる。

滞在先では大抵、バックパッカーが集まるドミトリーに泊まっている。4人から8人程度で大部屋をシェアするのだが、これがまた一人旅にはうってつけの宿泊スタイル。互いに貴重な観光情報を交換できるし、朝までウォッカを飲み続けながら他愛のない話で盛り上がることもできる。

そうした会話の中で、殆ど必ずといって良いほど尋ねているのが、日本を訪れたことがあるかという質問。残念なことに、多くのバックパッカーに首を横に振られてしまうのだが、興味深いのはその理由だ。

大半は、物価が高すぎることや、アクセス性の悪さを挙げる。日本人ですら東京や大阪といった主要都市の物価が安いとは思わない上に、最近消費税も上がった。だが、実際のところ地方都市であれば物価は西欧諸国のそれと殆ど変わらない上に、安いホテルやレストランの数も決して少なくはない。アクセス性の悪さについては、バックパッカーの多くが複数国を一度に訪れる傾向にあることも関係してくるかもしれない。日本は島国なので、飛行機を利用することになるが、LCCの普及が欧米諸国と比べて遅れをとっている日本への便はまだ少し手が届きにくいのかもしれない。地理的な問題は解決のしようがないが、その分入国しやすいよう交通機関を整備することはまだまだ対応が可能かもしれない。

更に注目すべきなのが、英語が通じにくいという点。東欧に来て驚いたのが、英語はもちろんのこと、ドイツ語とロシア語とスペイン語の併記が駅や有名観光地などの標識になされている点だ。ポーランドやチェコを旅する中で、道行く人に英語で場所を訪ねても全く問題はなかった。駅員や観光地のスタッフに至っては、簡単な日本語の挨拶さえできる人も少なくない。

もっとも、言葉さえも全く通じない環境で過ごすことに意義を見出す人もいるにはいるが、バックパッカーを含む多くの観光客は最低限度の英語でのコミュニケーションが取れることを前提にしている人が少なくない。そういった視点で日本を見つめなおすと改善すべき点は多い。駅や観光施設の標識、レストランのメニュー、ホテルの室内設備の利用方法といった重要な情報は大抵、日本語だけで記載されているか、外国人にとっては意味不明すぎるローマ字表記が読めないほど小さく併記されている。東欧諸国から学べることは、基本的に全国の主要都市のレストランやホテルは英語でのメニュー表記を実施することや国内全ての空港や駅が英語はもちろん、日本を訪れている主要な観光客の言語である韓国語や中国語、タイ語での表記も進めること。

日本政府観光局が公開している統計データによれば、英語圏出身者を除く主要な訪日外国人は、韓国人(2,456,165人)が最も多く、2位台湾人(2,210,821人)、3位中国人(1,314,437人)、4位香港人(745,881人)、5位タイ人(453,642人)と続く。日本を訪れてくれる人々の母国語で必要な情報を提供することこそ、客人をもてなす最善の方法だ。

複数の言語で同じ情報を表示することは往々にして雑多な状態になりやすいが、こうした問題はデザインの向上で解決できる上に、たとえ現状よりもごちゃごちゃしたところで得られる効用の方が遥かに大きい。

最後に、これは個人的な意見だが、日本には無料で使えるwifiスポットがまだまだ少ない気がする。日本を訪れる外国人観光客にとって、ガイドブックだけでは不十分な情報は少なくない。例えば、鉄道やバス等といった公共交通機関のタイムリーな運行情報や乗換情報、レストランのレビューといった情報はガイドブックだけでは物足りない反面、インターネット上では十分過ぎる程提供されている。

ポーランド滞在中の話だが、急遽滞在先を変更したいと思った時に、下車した駅のホームにポーランド国鉄が提供しているフリーwifiがあったために、新たな滞在先までの鉄道情報やホテルの予約変更などが簡単にできた。更に、ポーランド国鉄は、鉄道の予約やキャンセルが手軽にできるスマートフォン向けアプリまで準備しており、クレジットカードの情報を登録するだけで、発券所に行く必要さえない。

そう考えると、ロクにwifiもない、JR駅員の英語力も信頼できない、みどりの窓口までの行き先を示す英語標識もない、そもそもみどりの窓口とはなにか説明する英文表記もない、なんとかみどりの窓口に辿り着いてもぐったりするほどの長蛇の列が出迎えてくれるのだから、日本はことごとく観光客に優しくない国なのかもしれない。

とはいえ、日本には十分過ぎるほどの観光資源と外国人ファンがいる。アニメ産業を主力としたクール・ジャパンはフランスやイギリスをはじめとした西欧諸国で絶大な人気を誇る上、アジアからもディズニーランドやハリーポッターで大人気のUSJを目当てに日本を訪れようとする外国人は少なくない。実際、法務省資料によれば、日本を訪れる外国人の数は、金融危機直後の2009年や東日本大震災が起こった2011年を除いて、順調に伸び続けている。

食べ物もお酒も美味しく、伝統産業も未だ活気満ち、新幹線をはじめとする世界トップレベルの安全性と正確性を誇る鉄道網に手厚い顧客サービス。日本には観光客を惹きつけるだけの余り余る程の魅力があるが故に、更なる観光大国に向けた飛躍と改善の動機を探すことは決して難しいことではない。