たいらくんの政治経済。

BLOG

2014/12/21

トヨタが描く未来とMIRAI

MIRAIはこれからの自動車の常識を変えられるだろうか

今月15日から国内での発売が開始されたトヨタの新型FCV(燃料電池車)、MIRAI:ミライ。その名の通り、未来的でスタイリッシュなデザインと内装を誇るMIRAIの燃料は水素のみ。従来のガソリン車やハイブリッド車とは異なり、二酸化炭素を一切排出せず、出るのは水だけ。まさに究極のエコカーといえるMIRAIは、これまでの自動車の常識を覆せる可能性を大いに秘めている。

アメリカの情報サービス大手のBloombergは、水素ステーションの建設等、燃料電池車を普及させる上で必要不可欠なインフラが十分に整っていない中でのMIRAIの発表の背景には、トヨタの現代表取締役社長である豊田章男氏の特別な想いがあったのではないかと分析する。同氏の祖父にあたるトヨタ創業者の豊田喜一郎氏は、黎明期にあった自動車産業が将来大きく成長することをいち早く確信した人物の一人。ガソリン車の普及という壮大な目標に向けて尽力していた同氏は、その夢半ばに57歳という若さでこの世を去ってしまったが、今年5月に58歳の誕生日を迎え、祖父の年齢を初めて上回ることになった豊田章男社長にとって、MIRAIの発表は、単なる新型モデルの発表以上の、いわば自動車産業の歴史の転換点としての象徴的な意味合いをもっているはずだという。

事実、MIRAIに関するホームページには、MIRAIを単なるエコカーのターニングポイントとしてではなく、自動車の歴史のターニングポイントにしようという強いメッセージが記されている。そんなトヨタの想いと世界最高レベルの技術の結晶ともいえるMIRAIは、実用に耐えうる十分な性能を誇っている。駆動用バッテリとして34個のニッケル水素電池を搭載し、最高速度は175km/h。加速性能は0-100km/hで10秒と、一般のガソリン車と遜色ない仕上がり。駆動性能の他にも、極めて高い安全性能も備えており、ミリ波レーダー方式を採用したプリクラッシュセーフティシステム(衝突予防安全装置)や隣の車線を走る車両を感知するブラインドスポットモニター等、最新のセーフティーシステムも搭載されている。なによりも重要なポイントが、燃料がガソリンではなく水素であるために排出される二酸化炭素の量がゼロで、水素タンクを1度満タンにすれば、約650kmの連続走行が可能という点だ。

もっとも、原油価格の下落でガソリンの一般小売価格も低下しているという状況の中で、MIRAIの購入を考えている人々の最大の関心事といえば、燃料となる水素の市販価格ではないだろうか。今年11月には、全国各地で商用水素ステーションの整備に取り組んでいる岩谷産業が、都心部での水素の小売価格を1,100円/kgに設定すると発表。同社のホームページには、6月に経済産業省・資源エネルギー庁が発表した水素・燃料電池戦略ロードマップの基準に則り、2015年は「ガソリン車の燃料代と同等以下」、また、2020年には「ハイブリッド車の燃料代と同等以下」の実現を目指すと明記されている。

トヨタが公表しているデータによれば、MIRAIの場合、走行距離1kmあたり約10円の燃料費がかかるということなので、タンクを1度満タンにするのに約6500円の費用がかかる。1kmあたり約10円という燃費は、プリウスやアクア等、トヨタが既に市販しているハイブリッド車の燃料費と比較すると依然として高いものの、通常のガソリン車よりは低い。今後、水素ステーションの普及に伴って、水素価格の低下・安定化が見込めるため、とりわけ環境に配慮したエコライフを送りたい消費者にとっては、十分現実的なレベルの経費というわけだ。

気になるMIRAIのメーカー希望小売価格だが、税込み723万6000円からと少し高めの価格設定。まだ普及していない最新の技術を搭載した車ということで分からなくもないが、これでは多くの人にとってそう簡単に手がだせるものではないだろう。もっとも、MIRAIの場合、政府のエコカー補助金・優遇制度に加えて最大約202万円のクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金が支給されるため(支給条件として最低4年間の保有義務の履行が必要)、225万円程小売価格よりも安く買うことができる。こうした公的な補助制度が、MIRAIの購入を検討している消費者を後押しすることは間違いはないだろう。

トヨタが満を持して発表したMIRAIだが、燃料がガソリンと同様、引火性のある水素を用いているために、安全性に疑問を呈する声が少なくない。だが、R水素ネットワークは、水素が爆発するから危険と誤解される主な根拠に、①水素の燃焼範囲が広い②極めて小さなエネルギーで着火する、という2点が挙げられるとした上で、『空気に4%混ざると燃える気体になる水素ですが、拡散性が高いため、開放した空間で濃度4%以上になることは、ほとんありません。空気より軽い水素は漏れ出て酸素と混ざり、燃え始めた瞬間に上昇し消えてしまっています。「素早く拡散する」という安全確保上有利な物性は、実験でも証明されています』と説明。トヨタ側も、ガソリン車同様、引火爆発の危険性はあるものの、実用上必要な安全基準は満たしているという姿勢を崩さなかった。ちなみに、トヨタが独自に実施したMIRAIの安全性能に関する検証実験の過程では、水素タンクに穴を開けても、その瞬間燃料の水素が気中に拡散するために、引火爆発の危険性は極めて少ないと結論づけられている。

具体的に水素で動く燃料電池車がどれほど安全であるかについては、今後更なる検証が必要となるわけだが、環境を汚染しない燃料電池車の普及は、持続可能な社会に向けての重要な要素となり得ることは間違いないだろう。既に国内での販売が開始されたMIRAIだが、アメリカやヨーロッパ等では、来年以降の発売となる。トヨタが描く未来は、MIRAIの成功に懸かっている。

2014/12/18

Spotifyは日本市場で成功できるのか

Spotifyの日本上陸は果たして実現するのだろうか

2006年に設立され、2008年10月からスウェーデンでサービスを開始したSpotify。2011年にはアメリカの音楽産業にも参入し、これまでに32カ国への進出を実現している。今年5月には、ユーザー数4000万人を突破したと発表。参入障壁も多く、新規参入で安定した利益を生み出すことの難しい音楽産業で、文字通り、破竹の勢いで規模を拡大し続けるSpotify。その最大の特徴は、なんといっても有料ユーザー数の多さであろう。ユーザー数の内訳に着目してみると、総ユーザー数の実に約25%に相当する約1000万人が有料会員。ちなみに、その月額使用料は、イギリスの場合は£9.99(約1800円)、アメリカ$9.99(約1200円)、オランダを含むユーロ圏では€9.99(約1500円)と各国各地域で流通している通貨レートで若干の差があるものの、ネットサービスの月額料金としては決して安くない料金設定となっている。 

まずは簡単にSpotifyのサービス内容を説明しよう。有料会員の場合、無料会員と比べて高音質で再生できる他、音声広告もなく、プレイリストがシャッフルされることなく自由に聴きたい曲を選ぶことが出来る。無料会員は、ある程度質の高い音質で再生できるものの、聴きたい曲を選ぶことはできず、再生されている曲が気に入らなければ、回数制限はあるものの、次の曲へとスキップすることができる。一見、面倒で効率の悪い仕組みのようにも思えるが、アーティスト毎や曲のジャンル等まとまった曲のグループでシャッフルされるため、これまで聴くことのなかった曲を聴く機会が増え、新しい自分好みの曲を見つけることもできる。 

4000万人というユーザー数は、音楽ストリーミングサービスとしては世界最大級。2013年の売上高は実に7億4686万ユーロで、2012年の4億3028万ユーロと比較しても前年比74%近い成長を遂げた。Spotifyの売上高の91%は、上述の有料会員からの月額使用料から発生しており、残りの9%は広告収入等が占めている。売上の大半を広告収入に依存している多くのネットサービスとは異なるビジネスモデルを誇るSpotifyだが、1年で1100億円近い売上を記録する一方で、同社は昨年5780万ユーロ(約85億円)もの純損失を記録している。2012年の純損失8670万ユーロよりも減ってはいるものの、多くのユーザーを抱えてもなお1ユーロの利益も出せずにいる。 

その理由の一つとして、Spotifyが各国のレコードレーベルに支払っている著作権使用料が挙げられる。Spotifyは現在、ワーナーミュージック・グループ等の大手レコードレーベル等と契約を結んでおり、1再生当たり約0.7~1円程の使用料をレコードレーベルに支払っており、こうした著作権使用料の支払いは、Spotifyの売上高の7割近くを削っている。また、同社がユーザー数獲得のために海外の新規市場開拓を目的とした多額の投資を繰り返してきたこともまた、売上が利益へと直結していない要因となっている。 

とはいえ、徐々にその存在感を強めているSpotify。このままサービス提供国を増やしつつ、有料会員の割合を高めることができれば、多額の利益を生み出すに違いない。欧米の若者を中心に絶大な支持を集めてきたSpotifyだが、日本ではそれほど知られていない。それもそのはず、日本では依然としてサービス提供がなされておらず、数年前にSpotifyが公式に日本でのサービス開始が予告されてから時間だけが過ぎている状況だ。音楽情報サイトのMusicman-NETでは、特別連載として「取り残される日本 Spotifyのジャパン・パッシングはなぜ起きたか」といった記事を掲載しているが、半年前までSpotifyの採用情報ページ上で東京勤務の会計担当者のリクルートを行っていたことからも、Spotifyが完全に日本市場を無視しているとまでは言いにくい。 

Spotifyの日本市場参入が難航している背景の一つに、日本の音楽産業の特徴ともいえるCD売上中心の産業構造が挙げられる。日本レコード協会の報告によると、昨年のCDを含む音楽ソフトの生産額は2704億円。一方で、有料音楽配信サービスの場合は416億円と低い。世界各国で音楽配信サービスが成長する中で、日本の音楽産業は低迷の一途を辿っており、CDも音楽配信サービスも年々市場規模を縮小し続けている。こうした特殊で縮小気味な日本の音楽産業への進出にSpotifyが二の足を踏んでいるのも、単純に利益を出せる見込みに乏しいからではないのか。東京オフィスでのリクルーティングとして会計担当を募集していた理由も、果たして日本で儲かるのかどうか確かめたかったのではないかと邪推してしまう。 

そこで、筆者なりにSpotifyが日本市場で成功を収めるための3つの提案をしてみたい。まずは、広告重視の収益モデルの強化。Spotifyを無料会員として利用すると、音楽再生中に時折ランダムに音声広告が流される。一見、広告というと鬱陶しい存在に思えるが、音楽と音楽との間に20秒程の広告が入ることはそれほど気になることでもなく、欧米風のドラマチックな演出やジョークを交えた音声広告であれば、新鮮な感じもする。無料と新しいもの好きな日本人であれば、テレビで嫌というほど慣れている広告など気にも留めないかもしれない。まずは、有料サービスの重点化というよりも、無料を謳い文句にアクティブユーザー数を増やすことのほうが先決かもしれない。有料会員になれば、音楽再生中にランダムに流れる音声広告等が取り払われるため便利ではあるものの、円安もあってかアメリカやイギリス水準のの月額使用料は割高感が否めない。既に日本市場には、ソニーが提供しているミュージック・アンリミテッドという月額980円の音楽配信サービスがあるため、1000円を超える月額料金の設定は、もはや現実的ではない。 

次に、日本の大手レコードレーベルとの契約の他にも、ネット上で活躍するアマチュアミュージシャンやニコニコ動画で有名な所謂「歌い手」を支援するクリエイタープログラム等を立ちあげて、ネットユーザーの認知度や関心度を高めることも日本市場での成功の鍵となるかもしれない。既存のサービスやミュージシャンといかに連携を強められるかは、日本の音楽市場を制覇する上で注意しなければならない点の一つだ。Spotifyがこれまで通り、アメリカやイギリスのミュージシャン中心のラインナップのまま日本市場に進出しても、依然としてJ-POP人気の強い日本では苦戦を強いられるだろう。Spotifyは、プレイヤーやアプリのデザインにも見て取れるように先進的で洗練されたデザインが特徴的。Spotifyがこうした芸術的なデザイン性を売りにアマチュアのミュージシャンの心を掴んだ上で、彼らが自らの音楽を売るプラットフォームとしての地位を獲得できれば、Youtubeや他の動画配信サービスではほぼ全くといって良いほど利益の出せない新しいミュージシャンにも活躍の機会をもたらすに違いない。 

最後に、具体的なサービス使用場面を意識した効果的なプロモーションの必要性。公共交通機関が発達し、人口過密気味な日本の主要都市では、スマートフォンやMP3プレイヤーで音楽を聴いている人々が決して少なくない。電車での通勤や通学場面でのSpotifyの活用は大いに有り得るシチュエーションだ。毎日のように通勤通学している日本人の多くは、毎回同じプレイリストを聴くことに飽々しつつも、その適切な解決方法を探せずにいるかもしれない。Spotifyは、ユーザーの好きなアーティストや曲のジャンルというおおまかな基準の中で曲をシャッフル再生するという仕組みために、これまでユーザーの聴いたことのないユーザー好みの曲を見つけやすいという最強の謳い文句がある。こうした具体性に富んだプロモーション活動を行えばきっと、日本人ユーザーの獲得に繋がるかもしれない。 

音楽ストリーミングサービスのグローバルスタンダードになりつつあるSpotifyであるが、日本に上陸する日は果たして来るのだろうか。ヘビーユーザーの一人としては、Spotifyの日本でのサービス開始のその日が来るのが待ち遠しいて仕方ないといったところだ。

2014/12/09

違和感しかない反特定秘密保護法のSASPLの活動



特定秘密保護法に反対する学生有志の会SASPL(Students Against Secret Protection Law)は、今月10日に施行開始予定の特定秘密の保護に関する法律への抗議を目的とした2日間にわたる首相官邸前デモ活動を実施すると宣言。デモ活動1日目を終えた今日、TwitterやFacebook等のSNS上では、SASPL主催のデモ活動への参加報告や応援コメント、2日目のデモ活動に向けて意気込む投稿が目立った。慢性的な不況の影響から、暫くの間厳しい就職氷河期に身を晒さなければならず、希望すら持てないようになっていた日本の若者が、若者の草食化なる不本意なレッテルを剥がそうと何かと熱心に取り組むその姿は、世間からの注目を浴びるようになった。若い世代が元気であることに越したことはないのだが、残念なことに(若気の至りともいえるかもしれないが)そのエネルギーはあらぬ方向に逸れ続けている。 

そもそも彼らが問題としている特定秘密の保護に関する法律、通称、特定秘密保護法とは一体どんな法律なのだろうか。昨年12月13日に交付されたこの法律の総則には、同法の目的が記されている。

「この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする」 

よくある法律と変わらず長ったらしいので簡単に要約すると、「インターネットが普及してきて国の安全保障に関わる情報が漏れやすくなったから最も重要な情報は特定秘密としてちゃんと管理するよ」ということ。同法三条には、その特定秘密の対象となる事項が「当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」であると示されているが、何度読み返しても結局のところ何が秘密の対象となるのかはいまいちはっきりしていない。 

政権与党である自民党は、ホームページ上に掲載しているコラムで「自衛隊の保有する武器の性能や重大テロが発生した場合の対応要領といった、国と国民の安全にかかわる重要な情報」等が特定秘密の対象となると説明しているが、特定秘密かどうかの判断は行政機関の長が下すため、政府による恣意的な情報隠蔽が行われるのではないかという批判が殺到した。事実、法律制定の過程でも、具体的にどのような基準でどのような事項が特定秘密として指定されうるのか、という問題を巡って熱論が交わされた。 

こうした批判に対して、自民党は「[特定秘密]指定が恣意的に行われることがないよう、政府は、安全保障に関する情報の保護、情報公開、公文書管理等の有識者の意見を聴いた上で、特定秘密の指定等の基準を作成することとしており、大臣等は、当該基準に基づいて指定を行うことになります」と説明しているが、知りたがり屋の反対派の怒りを鎮めるには至っていない。もっとも、同法律が具体性にかけており、特定秘密の指定基準が明確でないという批判は十分に的を射ているように思えるが、個人的には、今まで国と国民の安全にかかわる重要な情報を保護することを目的とした法律がなかった方が恐ろしいと感じる。 

自民党の説明を読む限り、同法律の目的があくまでも漏れたら国や国民に深刻な影響を与えかねない重要な情報のみに限られていることは明らかだが、想定されている法律運用がまるでなされず、国民が知るべき有益な情報までひた隠しにされては困る。そういった考えられる問題を防ぐ意味でも、法律施行後も慎重に状況を見極める必要は当然にある。だが、そもそも人間というものは、他人が知っていて自分が知らないことという状況を認識するとどうしても知りたくなるものではないか。好奇心ともいえるこの性質は、誰しもが本能的に持ち合わせている性質のひとつであり、多かれ少なかれ度が過ぎることで痛い目に遭うものではないかと思うのだ。少し冷静になって考えると、同法律が特定秘密に指定するであろう情報、例えば、自衛隊の装備の詳細仕様や運用情報、北朝鮮問題等の外交情報等は国民が知ったところであまり意味はない上に、他国に知られてしまえば対策を講じられてしまう可能性も高い。加えて、アイスケースに入る姿を自ら熱心に他人に伝えたがる人が少なくない今の世の中、自らの利益や秘密はおろか、国全体の安全保障に関わる利益や秘密を守ってくれない国民がどれだけ存在するのか考え始めると寒気さえ感じる。 

とはいえ、反対派の怒りは、単純に同法律が何をどんな基準で特定秘密に指定するのか明確でないという点だけに集中しているというわけではない。賛成派・反対派の双方ともに、同法律が国や国民生活に関わる重大な影響を持っているという点では意見が一致しているようだが、反対派の人々に言わせれば、これほど重要な問題に関連した法律であるにも拘わらず、あまりにも性急に過ぎるというわけだ。実際、同法律制定に係る法案は、昨年11月26日の安全保障特別委員会で強行採決された後に、同日中に衆院本会議を通過し、翌月5日には国家安全保障特別委員会も強行突破した上で、同月6日の参院本会議で正式に可決成立するという過程は、誰の目から見ても、王将の餃子提供時間並に短いように感じる。もっとも、急いで制定した割には、施行日が施行開始までの最長1年間という期限ギリギリの今月10日に決まったことからも、政府としても結局のところ慎重にならざるを得なかったのだろう。 

前述のSASPL(そもそも首相官邸の英文資料によれば英訳正式名称はThe Act on the Protection of Specially Designated Secretsだから、SASPLじゃなくてSATAPSDSじゃないの??てかなんで日本の法律なのに英語略称なの??)は同法律について、「特定秘密保護法は、独立性の高いチェック機関を持たないままに行政が曖昧な秘密の範囲を指定できるなど、行政の暴走を防ぐことのできないままに私たちの「知る権利」を奪いかねないものです。また非常に重い刑罰規定やプライバシーの侵害となりかねない適正評価制度など、私たちの自由が、三権分立の効かない行政権の暴走によって著しく脅かされる可能性をはらんでいる」として、強い懸念を示しているが、そもそも国家安全保障に関わる情報に独立性の高いチェック機関がアクセスできるようになってしまえば、更にそのチェック機関をチェックするチェック機関が必要で、そのチェック機関をチェックするチェック機関も情報にアクセスできるなら更に...というように秘密を守る上で鉄則ともいえる、「可能な限り知っている人を少人数に留めておく」ということが難しくなってしまう。 

そもそも行政の暴走を抑える最終手段とも言える選挙・投票行動を全世代中最も疎かにしている若者世代が、自民党の石破茂幹事長に「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と馬鹿にされてしまうようなデモ活動を始めるくらいなら、もっと周囲のAKB選挙で投票行動のプロになっている同世代の仲間たちに声をかけて一緒に投票に行ったほうが何倍も良いのではないか。夜遅くまでデモ活動を平日に実施して翌朝の大学での講義に遅刻しているようではパパもママもきっと今頃怒り狂ってるはずだ。 

もっといえば、今回の法案を取り上げて、国家機密レベルの情報を知り得ないことが知る権利を害することになると主張するくらいなら、より身近な、例えば、民間企業の個人情報保護に関する問題の方を取り上げるべきだった。大学生が大好きなLINEやFacebookをはじめとするSNSの個人情報規約は、特定秘密保護法並に具体性に欠けている場合が少なくない。殆どの場合、サービスの利用を始めた時点で仮に利用後に規約が大きく変更されても、サービスの利用を続けることで新しい規約を受け入れたことになる。このことがどんな危険性を孕んでいるか、特定秘密保護法の危険性を声高に主張しているSASPLの関係者ならきっと分かるはずだ。 

SNSの急速な普及によって、誰もが自らの私生活に関する情報を気軽に他人とシェアできるようになった。ある研究では、Twitterの投稿内容をある程度調べることでユーザーの住所や性別、趣味さえも事細かに理解することができるのだという。本名での利用が長らく前提とされてきたFacebookでは、住所や郵便番号はもちろん、所属大学や勤務先さえもいとも簡単に知られてしまう。最近になって、Facebook社はこうした情報をユーザーが簡単に自分で管理出来るように仕様を変更したものの、未だ多くの人の重要な個人情報がグローバルに発信されているのだ。国や国民によって、大学生がどんな激しい飲み会を未成年の後輩達に強要しているか、どの学生が他人の彼氏と浮気しているかなど、知ったこっちゃないわりと重要性の低いどうでも良い情報に過ぎないが、当の学生本人にしてみれば、学期末試験の過去問情報並みの機密情報に他ならない。ところが誠に残念なことに、こうした学生にとっての特定機密は、今回政府が施行開始した特定秘密の保護に関する法律では守ることさえもできないのだ。 

さぁ、12月に入ってからそろそろ本格的に寒くなってきた。首相官邸前でデモをするくらいなら、お家に帰って友達と一緒に鍋でもしたらどうだろう。あ、そうだ。せっかく第47回衆議院議員総選挙が次の日曜日に迫ってきているのだから、どこの政党に投票するか話し合ってみるのも良いかもしれない。東京1区に出馬している世界経済共同体党代表の又吉イエス氏なら頼めばきっと大学の期末試験なくす法案を提出してくれるだろう。

How far is the magistrates' court in need of reform?

Magistrates' Court Reform is one of the key topics in the field of English Criminal Justice System.

The magistrates’ Court is perhaps one of the busiest divisions in the English judicial system, which currently undertakes approximately 95 per cent of the criminal cases in England and Wales (Davies, 2010: 271-272). The magistrates’ court is functioning as a lower court, however, since the court processes the most of the criminal cases, it is playing an essential role in the English criminal justice system. This article will discuss how far is the magistrates’ court in need of reform by analysing the outcome of the recent field trip to Reading magistrates’ court. The details of the two criminal cases will be given, followed by a brief analysis of several recent academic studies on the magistrates’ court reform. It will be concluded that the substantial functional enhancement of the magistrates’ court, such as the expansion of jurisdiction (Green, Ministry of Justice: 2013), is indispensable to reduce the amount of public spending on the current judicial system and to attract more civil awareness towards criminal actions, which may ultimately lead to more reasonable and effective system.

As mentioned above, this article will focus on two criminal cases, which have been assessed by Reading magistrates’ court on 31st of October. The first case was committed by a male offender, who has stolen a 15GBP worth of meat products (a leg of lamb) from one of the stores of Sainsbury’s. Upon realising, he has been caught on a CCTV camera and was arrested after he walked out of the store. Although he pleaded guilty immediately after the beginning of the case and the amount of the damage was relatively small, three of the magistrates considered the case seriously since he has a possible sign of illicit drug use and eventually they imposed a fine of 105GBP including 15GBP of compensation for the stolen meat on him in addition to a six-month community order. In contrast, the second case was committed by two Romanian male migrant workers, who have conspired with each other to purloin some 500GBP worth of garments from TKMaxx. Both of the Romanian defendants pleaded guilty and they claimed that it was unavoidable to commit the theft since they have recently lost their car wash jobs and their financial condition was in a critical situation at that moment. However, the magistrates have acknowledged that the crime was carefully planned and vicious because they drove over 120 miles to Reading from their home town to commit the crime and one of the defendants was acting as a human shield in order not to be detected by a shop clerk, which resulted in the serious disturbance of the initial police investigation. In response to this, the solicitor repeatedly emphasised the point that the defendants have suffered continuous destitution for a long period since they have been paid only 35GBP per day. Furthermore, given the situation that they have been dismissed from the car wash company, which used to contribute to maintain a tiny shred of hope, they have been impelled to give up their life plan. Interestingly, however, the magistrates’ attention was mainly focused on whether the offenders have a plan to return to their country or not. When the magistrates discovered the fact that the Romanian offenders were going back to Romania immediately after the court case, one of the magistrates nodded her head. In the end, three magistrates agreed to impose a fine of 50GBP on them and no particular compensation order has been made. Although the magistrates have given the punishment, the defendants have to wait within the court building until the local police issue the criminal reference number. The defendants’ solicitor seemed overcame with surprise and he put up opposition that the defendants should be released immediately after the court case since the criminal reference number should have been provided to the court earlier. Although the solicitor pointed out that there were a potential neglect of duty and a breach of Criminal Procedure Rules committed by the local police and the magistrates’ court, he reluctantly agreed to wait at the court with the defendants.


Magistrates are mostly unqualified citizens from local towns.

Whilst these two cases can be categorised as petty theft, the punishment for each case was considerably different. For instance, the former case, which caused a damage of 15GBP, resulted in a 105GBP fine and a low-level community order, however, the latter case, which caused a damage of 500GBP, resulted in a 50GBP fine for each offender only. However, according to Magistrates’ Court Sentencing Guidelines, it is clear that the Romanian workers should have received harsher punishment (Band B fine to medium level community order) for the crime since the court has found some evidence to prove that they had some planning to commit the crime. Although the assessment of the culpability of the case and the sentencing decision is made depending on the seriousness of the crime (Sentencing Guidelines Council: 2008), the reason why the Romanian offenders received relatively small fines is unclear. Additionally, although a smooth cooperation between with magistrates’ court and police organisations is crucial to maintain the quality and efficiency of justice, there were some technical or human errors occurred during the court case such as the delayed submission of the criminal reference number.

Despite the fact that the court did not spend more than an hour on reviewing the cases since both cases were summary offences, the court observed criminal procedure rules including the examination of a witness and the submission of sufficient evidence. The procedures gave the impression that the magistrates seemed to have already acquired the legal qualifications in order to serve as a magistrate at the court because the court proceedings were formal and dignified. However, it is astonishing to notice that the magistrates are usually consist of unpaid volunteers and their position does not necessarily require any professional legal qualifications, which means they are mostly ordinary citizens came from a variety of personal backgrounds. According to the government’s webpage, candidates who want to become a magistrate have to fulfill some non-legal requirements, such as age, health condition, personal qualities and characters. Candidates have to be over 18 and under 65 and they must have a certain level of condition to meet all the health and personal requirements. That is to say that the vast majority of the citizen of England and Wales can be a magistrate. With regard to this point, as stated by Malcolm Davies, although all magistrates’ court are advised by a team of legal advisers who, must be a barrister or solicitor, since magistrates have final authority to make decisions, the constitution of magistracy has triggers some reasonable criticism such as what is the justification for “such vital roles as the adjudication of guilt and the sentencing of the offender to be carried out by amateurs, who cannot be expected to appreciate the finer points of criminal liability, let alone the complexities involved in making sentencing decisions” (Davies,  2010:271-276). However, the government clearly states that the candidates are required to complete mandatory training session in order to maintain the quality of justice (GOV.UK, Ministry of Justice, 2014). Moreover, it can be said that the current system of magistrates’ court seems appropriate since it is successfully representing reasonable degrees of gender, ethnic and generational diversity (Davies, 2010:274-276). According to Davies, nearly half of the magistrates are female and the participation of ethnic minorities in the system is steadily increasing, which contribute to maintain a certain degree of diversity (Davies, 2010:274-276). It is assumed that although there is some concern over the role of magistrates, the participation of ordinary citizens in the criminal justice system has positive effect, such as the cost-effectiveness of the system and the diversity of magistrates. Although the government is trying to strengthen the power and influence of magistrates’ court by increasing the limit of fines (Green, 2013 & Dean, 2014), the research conducted by The Civil Liberties Trust indicates the fact that magistrates’ courts attract less public confidence than jury trial (Said, 2002: 4). As stated by Damian Green, the effective use of magistrates’ court will reduce the cost of judicial system, however, it is also essential to improve the public confidence in the system to realise the court reform (Green, 2013).


In conclusion, it can be argued that the role of magistrates’ court is important since the court system directly facilitates ordinary citizens to participate in the process of the criminal justice system. Magistrates are mostly unqualified unpaid volunteers who live in England and Wales came from diverse personal backgrounds. Magistrates’ courts have successfully representing social diversity, since more female citizens and ethnic minorities are participating in the system as magistrates. Although the government is trying to enhance the function and the role of magistrates’ courts since such a reform will lead to reduce the amount of public spending on the criminal justice system, one of the researches on the public awareness towards magistrates’ courts indicates that the courts attract less public confidence than other trial system. It is submitted that the magistrates’ courts reform in general is acceptable, however, there were several human errors and issues in judicial consistency, such as the delayed submission of criminal reference number, which need more consideration.



Bibliography
- Davies M, Croall H, Tyrer J (2010) Criminal Justice, Harlow: Longman, 4th edition
- Dean L, (2014) “Speeding Fines Up to £10,000 Under Magistrate Courts Reform”, International Business Times
- Green D (2013) “Reforming the role of magistrates”, Ministry of Justice, GOV.UK
- Magistrates’ Court Sentencing Guidelines, Definitive Guideline, Sentencing Guideline Council
- Newburn T (2012) Criminology, Routledge, London: 2nd edition
- Said T (2002) Magistrates’ Courts and Public Confidence, A proposal for fair and effective reform of the magistracy, The Civil Liberties Trust: London