たいらくんの政治経済。

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2016/01/30

NY大豪雪の話題を受けたグローバル時代のニュース番組の在り方


記録的な大豪雪となったアメリカ北東部

ニューヨーク州などアメリカ北東部を中心に記録的な積雪となった先週の大雪。東京や香港でも記録的低温が続くなど、先週はとりわけ寒い一週間だったと思います。アメリカで起きた今回の大豪雪の話題は、日本を含め世界各国のニュース番組で取り上げられました。

アメリカの大雪のニュースは聞き飽きたイギリス人

歴史的な異常積雪を受けて、今月26日に非常事態宣言を発令した、ニューヨーク市。防寒着姿で市民に警戒を呼び掛けたビル・デブラシオNY市長の記者会見の様子は、大西洋をまたいだイギリスでもライブ中継で放送されました。ところが、タイムズスクエアで雪合戦を楽しむニューヨーク市民とは裏腹に、テレビのニュース番組の有り方について疑問を呈したイギリス人が少なくありませんでした。これに関連して、イギリスの公共放送局BBCで興味深いニュース番組が放送されていましたので、ご紹介したいと思います。

グローバル時代のニュース番組の在り方

隔週金曜日に放送されているBBCのニュース番組Newswatch15分程度の比較的短い番組ですが、視聴者からのメッセージを番組中で公開し、それに対して番組責任者や専門家がコメントするなど、インタラクティブな側面があることが特色です。この番組は、2003年に開始された米英軍のイラク侵攻の中心的根拠となった大量破壊兵器の脅威について、英国政府が恣意的な情報操作を行ったとするBBC側の批判が、偏向報道であったと問題視したハットン司法調査委員会の報告書、いわゆる「ハットン・インクアイアリ」を基に、より公正公平な報道を実現する目的で始まりました。ここ最近でNewswatchが扱った話題には、シリア内紛や移民問題など、多様な見方や考え方のある比較的センシティブなものがあります。


アメリカ北東部の大豪雪の話題はNewswatchでも取り上げられていましたが、BBCの視聴者からは「過剰に取り上げられ過ぎている」「報道のアメリカ化ではないか」といった批判的な意見が寄せられました。もっとも、今回の大雪は、文字通り、歴史的なものでしたので、ニュース番組に取り上げられることそれ自体は何もおかしいことではありません。番組に出演した専門家も「(大豪雪のニュースは)報道価値があるものだ」とコメントしていました。


ところが、先週のBBCのニュース番組のヘッドラインニュースとしてニューヨーク市の様子が中継された後の天気予報のコーナーでも大雪の話題が触れられ、イギリス各地の気象情報よりも先にアメリカの話題が繰り返されていた点を視聴者の一部が問題視。さらに、BBCの視聴者の多くはNY市民でないにも関わらず、前述のデブラシオ市長の7分間もの緊急会見の様子がまるまる放送されたのを受けて、BBCのニュース番組の話題の取り上げ方について猛抗議した視聴者のメッセージがNewswatchで触れられていました。皮肉屋なイギリス人らしいコメントの1つに「アメリカはいつからイギリスの州になったんだ?」というものも。


グローバル化が進み、世界各国の主要ニュースがヘッドラインニュースとして取り上げられることは、全く珍しいことではなくなりました。日本のニュース番組でも、アメリカやアジアなどの世界各地のニュース、とりわけ政治経済関連の話題がひっきりなしに取り上げられています。


しかし、自由度が高く、掲載できる内容と量がほぼ無制限のネットニュースとは異なり、ある一定度の公共性と公平性が求められるテレビのニュース番組は、どのような内容のニュースを、どれくらいの頻度で、どのように報道するのか、ということを常に考えなければなりません。この点において、「アメリカの大雪の話題ばかりではなく、よりイギリス人に身近である移民問題やテロリズムの問題を触れるべきだ」というBBCの視聴者が寄せたコメントは、もっとも意見だと思います。同様なことは、日本のメディアにも言えると思います。


公共の電波を用いて報道番組を放送する上で、放送局側の偏見や恣意性が含まれてしまうという点は、常に考慮しなければない問題の1つです。もちろん、完全に公正で公平な放送を実現することは無理難題を押し付けるようなことですが、それだけ大きな責任を持っているという自覚を、既存のテレビメディアの関係者は持たなければなりません。


インターネットの普及によって、誰もが自由に意見し、議論することができるような社会になりつつありますが、それでもなお、テレビの影響力を過小評価するべきではなく、とりわけニュース・報道番組については、その社会的影響力の大きさを考慮したうえで、番組自体の在り方についてよく考えなければならない問題であるといえるのではないでしょうか。

2016/01/19

JK援交は犯罪。でもJD援交は?


■国連専門家が提起した、日本の援助交際問題

まだ記憶に残っている方もいるかもしれませんが、昨年10月26日に国連を代表して来日した「子どもの売買、児童売春、児童ポルノ」に関する特別報告者、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏の「日本の女子生徒のおよそ13%が援助交際に関わっている」という記者会見での発言が物議を醸しました。前述のブキッキオ氏による問題提起に対し、外務省はすぐに「発言は不適当かつ極めて遺憾」と撤回要求。結局、国連側から基となるデータの提供はなく、後に事実無根であったことが明らかにされました。

■18歳未満の児童を対象とする買春行為は当然犯罪

とりわけ1990年代に大きな社会問題となった援助交際ですが、1999年に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関わる法律」が施行されて15年以上が経過した今もなお、援助交際やそれに類似するJKビジネス等が、東京や大阪等の大都市圏を中心に全国各地で行われています。大手新聞各紙の社会面に、教師や公務員、塾講師等、ありとあらゆる職業に就く、年齢も様々な成人男性が児童買春やそれに類する行為を行ったとして逮捕・起訴されたといった記事が掲載されることもそう珍しくはありません。最近の例としては、偶然にもブキッキオ氏の記者会見の3日後の昨年10月29日に起訴された、延べ1万人以上のフィリピン人少女を相手に買春行為を繰り返していたとされる横浜市立中の元校長のケースがありました。

現行法では、18歳に満たない児童を相手に、「対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等をすること」が児童買春と定義され、違反者を五年以下の懲役または300万円以下の罰金に処すとされています。身体的にも精神的にも発達過程にある未成年者の保護を目的とする現行法に異論はありませんが、ここで問題となるのは、18歳に達した女子学生を対象とする売買春行為の場合です。別な法律として、売春防止法がありますが、これは組織的な管理売春等を想定しており、18歳以上の成人同士による援助交際に対する罰則はなく、愛人関係と区別が容易につかないため、厳しく取り締まることはあまり現実的とはいえません。

■ところが18歳以上の場合は

18歳以上の女子学生については、すぐさま違反行為にはならないため、アダルトビデオや風俗産業等では、「女子学生」であることを売り文句にした宣伝・営業活動が広く行われています。いわゆる性交を意味する本番行為を風俗店側が形式的に禁止したり、アダルトビデオでは性器にモザイクをかけたりするといった、違法性を回避する手段は、「女子学生」に特化した営業形態をとる事業者のみならず、殆どのアダルト産業で常套手段として用いられています。

■同様な問題は英国でも

ブキッキオ氏が国連の代表者であったからか、同氏の発言に対し、多くのネットユーザーや政府関係者が「日本の品位を損なう発言」等といった諸外国からの評価を気にした反応が広くみられました。もっとも、児童買春に限らず、売買春行為はどの国にも必ず存在する社会問題の1つであることに間違いはありません。例えば、英国では、売春する学生側をシュガーベイビー、買春する男性側をシュガーダディとして、女子学生と社会人男性との援助交際を積極的に促す専門サイトが無数にあり、その中でも最大手のシーキング・アレンジメントというサイトでは、トップページに「授業料の高騰が続く中、援助交際は学費ローンや借金を避ける新しい方法」であると記載されています。昨年のBBCの記事に、ある女子学生が授業料分の金銭を得る目的で売春していることを母親が「誇らしい」とコメントしたものがありました。

英国では、2012年に実施された連立政権による大学授業料の改定のため、一般的な公立大学の授業料が最大3倍にまで膨れ上がり、年額150万円以上もかかるようになりました。授業料改定とほぼ同時進行で発生した欧州金融危機による国民の所得格差問題の悪化もあって、とりわけ中流層以下の女子学生にとって学士課程を取得することに伴う経済的負担の増大は想像に難くありません。

■日本と英国の類似点は

大学の授業料の高騰は、英国のみならず、日本でも徐々に深刻化している問題です。文部科学省が公開したデータでは、国立大学でも年額50万円以上、私立大学では年額80万円以上もの大金を費やさなければ、学位を取得することはできない厳しい現実が明らかにされました。日本と英国は、大学の数も多く、大学進学率も増加傾向にあるといった点でよく似た状況であるといえます。両国とも学位取得がもたらす就職率や生涯年収の向上効果は広く認識されており、今後ますます大学進学を決める学生が増えることはほぼ間違いないでしょう。加えて、日本では少子化問題もあるため、今後、大学の授業料が英国並みに高騰する可能性もないとは言い切れません。

■女子学生を対象とする売買春行為は合法か

18歳未満でなく、精神的にも身体的にもある程度成熟している女子学生による売春行為は、売春防止法に抵触する行為ではあるものの、罰則はありません。英国では、18歳未満の児童を対象とする買春行為は、年齢に応じて最長15年の懲役(13歳未満の場合は無期懲役刑)が課され、罰則は日本よりも厳しいですが、18歳以上の場合は管理売春でない限り、原則的に合法とされています。

他の欧州諸国でも、個人による売春行為を合法とした上で、性病やHIV対策、女性の人権を意識した公的な保護制度を導入した国は少なくありません。日本の場合、18歳以上の女性を対象とした売買春行為が合法なのか違法なのか明瞭でなく、明確な姿勢を示す必要があるといえます。合法とするならば公的な保護制度を確立しなければいけませんし、売春行為に従事する女性に対し、STD予防等、公衆衛生上必要なサポートを行わなければなりません。

逆に、違法とするならば実効性のある法律となるようにしなければ現行の売春防止法では意味がありません。また、売買春問題だけに着目するのではなく、前述の大学の授業料高騰等、女子学生の売買春問題に関連する問題や社会現象にも目を向け、より健全で公平な社会にする施策を講じる必要があるともいえます。

アダルト産業において、「女子学生であること」が1つのジャンルとして確立していることは事実です。また、こうした業界で働く女子学生に対して、「簡単にお金を稼ぎたいだけ」と周囲が捉えるケースも少なくないこともまた事実です。事情はそれぞれあると思いますが、個人的には、若くて有為多望な女子学生が売春行為に走るのにはそれなりの理由があると考えるべきだと思います。金銭的に困窮した結果、身を削る思いで働いても、十分な法的・公的保護も受けられず、妊娠や深刻な性病に罹患してしまえば、周囲からも見放されてしまいかねないといった現状だけはなんとかしなければなりません。