たいらくんの政治経済。

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2016/03/12

小学生が麻薬を買える今の日本社会に必要なこと

連日続く薬物犯罪の報道と使用者の低年齢化

覚醒剤取締法違反容疑で逮捕された元プロ野球選手の清原和博氏の話題に引き続き、今度は京都府で15歳の中学生と18歳の高校生が大麻取締法違反容疑で逮捕されるなど、ここ最近、薬物関連の犯罪がとりわけ若者たちの間で増えているような印象を受けます。昨年12月にも、同じく京都で12歳の小学6年の男児とその兄で17歳の高校生が大麻を吸引していたとして逮捕されるといった衝撃的な事件が起きました。 

こうした報道を受けて、恐らく多くの人は「なぜこんなに幼い子どもが違法薬物を入手できるのか」と不安を抱いていることでしょう。警察による事情聴取や捜査活動によって、徐々に入手経路が明らかにされている頃だとは思いますが、この話題に関連して、ロンドン大学のリア・モイル博士(犯罪学)が昨年、興味深い論文を発表していましたので、ご紹介したいと思います。論文では、英国の学生の間でみられる薬物供給ルートの常態化と社会的供給について詳細な考察が加えられていますが、同様な現象は、日本国内でもみられると考えられます。


知り合い同士で行われる小規模な麻薬取引

モイル博士の研究によると、調査対象としてランダムに選ばれた23歳から32歳までの様々な職業に就いている成人30名のうち、87%が過去1か月以内に麻薬を使用したと答え、その大半の入手経路が友人や知人を通じたものであったと答えています。こうした交流のある人々の中で供給されるドラッグには、コカインと合成麻薬MDMAなどのハードドラッグが過半数を占め、次いで大麻やマジックマッシュルームなどがあります。

注目すべきなのは、麻薬を使用者に供給するディーラーの大半がいわゆるマフィアなどの組織的な犯罪者グループに属するメンバーではなく、普段は社会人や学生をしている一般人で、またその多くが麻薬を購入する消費者の友人や知人であるという点です。とりわけ大麻については、比較的どこでも栽培できるため、生産から供給、消費までのサイクルが友人や知人同士といった小さなコミュニティの中で完結している場合も少なくありません。これは、麻薬犯罪の厳罰化に伴い、生産拠点が小規模化し、流通経路も複雑化を続けたためです。日本国内でも昨年12月、兵庫県で一戸建ての民家2軒を改装して大麻を栽培していたベトナム人2人が逮捕されていましたが、こうした小規模な大麻の生産は日本各地で秘密裏に行われていることでしょう。

これは推測に過ぎませんが、京都の子どもたちも、このように小規模生産された大麻をSNSなどを通して知り合った大人を通じて購入したと考えられます。 

麻薬問題を取り巻く誤解

麻薬犯罪のイメージとして、どうしてもマフィアや暴力団といった組織的な犯罪者グループをイメージしがちですが、近年になって、実際に麻薬を供給している末端のディーラーの大半が、凶悪性の極めて低い一般人であることが明らかになってきています。もちろん、コカインのように凶悪な麻薬カルテルが生産と供給の重要な役割を果たしているケースもありますが、こうしたカルテルは、米国政府による麻薬使用の厳罰化と武力を用いた制裁に伴って形成されたものであり、麻薬が違法でなかった頃には、こうした犯罪組織自体が存在していませんでした。

近年になって、オバマ大統領が過去に大麻の使用を認めたり、西欧諸国で大麻合法化の動きが進むなど、麻薬問題の捉え方が少しずつ変わってきているように感じます。これに関連して、英国をはじめとするヨーロッパ諸国で、ヘロインやコカインといったハードドラッグよりもアルコールの方が身体的・精神的悪影響が大きく、大麻やLSDよりも煙草の方が遥かに中毒性と依存性が高いといった研究論文が次々と発表されています。

こうした研究結果は、麻薬をアルコールなどよりも厳しく取り締まるという現行の法制度自体の妥当性を疑わせるものといえるかもしれません。その一方で、麻薬の使用は、既に存在している暴力団やカルテルといった反社会的組織の収入源となっていることも事実であり、単純に医学的な観点から法律の妥当性を論じることにも危険性があります。

効果的な解決方法を見出さなければ、問題は悪化する

しかしながら、米国で麻薬犯罪の厳罰化が刑務所収容者数の爆発的増加をもたらしたように、麻薬問題に対する施策を誤れば、問題をより深刻化させる可能性があります。また、麻薬犯罪は再犯率が性犯罪と同様に極めて高く、逮捕後の周囲からの綿密なサポートがなければまた手を出してしまうケースが非常に多いです。小学生ですら大麻を購入できてしまうという状況は改善しなければなりませんが、その一方で、彼らをどのように更生させるのかという点も考えていかなければなりません。

麻薬に手を出した人に社会的制裁を加えるだけでは、彼らを孤立させ、問題をより深刻にするだけです。法律で禁止されている以上、麻薬に手を出した人が犯罪者であることは間違いありませんが、厳罰化を進めるだけでは、問題は改善するどころか徐々に悪化しかねません。

麻薬問題はとても複雑で、解決の難しい問題なのです。

2016/03/02

18歳未満の店内飲食禁止――迷走する英マクドナルド

ドナルドも騒がしい子どもには厳しい??

■英国マクドナルドが導入した驚きの新ルール

国内でも迷走ぶりが指摘され続けているマクドナルドですが、昨日、英国マクドナルドが発表した新たな経営方針が日本マクドナルドに引けを取らない迷走ぶりでしたのでご紹介したいと思います。その経営方針とは、一部店舗での18歳未満の店内飲食の禁止。ハッピーセット(ちなみに米国や英国ではハッピーミールと呼ばれています)やそれに類する商品などで子どもをターゲットとした商売を1970年代後半から世界的に続けてきたマクドナルドですが、なぜこのような思い切った決断を下したのでしょうか。

18歳未満の店内飲食の禁止、その背景とは

BBC英国放送協会の報道によれば、事件の発端は、ストーク-オン-トレントと呼ばれる地区で数週間前に起きた20人もの10代の若者たちによる乱闘騒ぎだそうです。騒ぎの知らせに加えて銃声も鳴り響いていたことから、地元警察は武装警察官とヘリコプターを出動。結果、8人が逮捕されましたが、この時逮捕された全員が既に保釈中とのことです。英国マクドナルドは、今回の事件を受けて、反社会的行動をとる可能性のある18歳未満の顧客の店内での飲食を一部店舗で禁止するという新たなルールを設けました。より正確にいえば、18歳未満の顧客は、18歳以上の大人と一緒でなければ店内での飲食が許可されないといった内容です。英国マクドナルドは、BBCの取材に対し、今回の対応がとりわけ若者だけを狙っただけの措置ではないと主張していますが、逮捕者が出た事実に鑑みて「他の顧客の安全を守るために一時的な措置として」18歳未満のみでの店内飲食を一部店舗で禁止するに至ったと説明しています。

一連の報道に対し、ある視聴者は「子どもたちは学校帰りに街なかを出歩くし、安く食事ができるからマクドナルドに行く。彼らは他にどこにも行く場所がない」とコメント。一方で、銃声が鳴り響く深刻な乱闘騒ぎにまで発展したことを受けて、今回の英国マクドナルドが設定した新ルールを肯定的に受け止めている視聴者も数多くいました。

また、地元警察も「子どもたちの集団は、無料Wi-Fiを使いたいがために飲み物を1つだけ買う。これが迷惑行為へと発展する」と今回の英国マクドナルドの決断を間接的に支持するコメントを出しました。

「反社会的行動」という表現にはなにか物々しい雰囲気を感じてしまいますが、未成年の利用客による迷惑行為と捉えれば、思い当たる例は日本国内でもいくつもあるかと思います。子どもにこそ笑顔で食事を楽しんでもらいたいというのがファーストフードチェーンの願うところですが、子どもであるが故に店舗関係者や他の利用客を困らせているといった現状もまた事実です。

 ■解決しなけらばならない問題は山積み

いかにより多くの顧客に気持ちのよいサービスを提供できるかというテーマは、飲食店に限らずすべての産業関係者にとっての至上命題であることは間違いありませんが、今回のような極端な経営判断は、日本に限らず、イギリスでもマクドナルド離れを加速させかねないこともまた間違いないでしょう。

最後にちょっとしたこぼれ話ですが、あるイギリス人ネットユーザーは今回の報道に対して「反社会的行動よりも子どもの肥満問題の方が心配だからマクドナルド自体を禁止すべき」とコメント。今のマクドナルドには、場当たり的な問題解決を図るのではなく、もっと顧客の声に耳を傾けた抜本的な経営改革が必要なようです。