著者: たいら・ゆうき-ケンブリッジ大学法科大学院犯罪学研究所修士課程所属、ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校法学部犯罪社会学卒(法学部首席全額給付奨学生)、入試課勤務・大学広報担当官。ロンドン大学キングス・カレッジ校戦争学部国際安全保障研究センター非常勤研究員・日本語言語コンサルタント(原子力科学専攻)。ペンタゴンコンサルティング・ディレクター。政治経済系のテーマで面白そうなトピックを個人的な視点で書いています。
2014/04/28
太ることが美とされる国の行き過ぎた習慣
世界三大珍味の1つ、フォアグラ。上品な香りとまろやかは風味は、多くの人々を魅了する。とはいえ、フォアグラの作り方は驚く程残酷だったりする。
フォアグラは必要以上に餌を与えたガチョウの肝臓。ある程度成長したガチョウに消化吸収のしやすい蒸したトウモロコシを漏斗を使って無理矢理流し込む。これを繰り返されたガチョウの肝臓は悲鳴をあげながら脂肪肝の状態になる。
こうした飼育方法をガバージュフィーディング(gavage feeding)と呼ぶが、ある国ではこのガバージュフィーディングを若い女の子に強制しているのだ。
アフリカ北西部のイスラム国家モーリタニアでは、10代になった女性を少しでも裕福な家の嫁に出すために、身近な食材の中でも比較的高カロリーなラクダの乳に砂糖を加えた液体を無理矢理飲ませて太らせる。
肥満を美しさの最も重要な要素に位置づける国に生きるモーリタニア女性は、食事というよりも拷問に近いガバージュを乗り越え結婚を迎えていく。
当然、ガバージュが直接的間接的を問わず身体に与える影響は少なくなく、酷い場合だと食事中に喉が詰まって窒息死するケースもあるほどだという。
ガバージュを強いられたモーリタニア女性には抗う術がない。食事を拒否すれば、つま先を木製の万力で潰される。ガバージュから逃れようとしても、ガバージュを受け入れようとしても、危険な状況に陥ることには変わりない。
痩せていることを美とする国もあれば、太っていることを美とする国もある。とりわけ、食べる物に乏しい砂漠地帯の国では、少なからず太ることに価値を見出す慣習が珍しくない。
国が違えば文化も違ってくる。多くの場合、その土地の文化が尊重されるが、当事者が苦しむ文化までも尊重しようとする考えは受け入れ難い。戦後、世界的に女性の地位向上に係る活動が活発化していく中、モーリタニア政府もようやくガバージュ廃止に向けて重い腰を動かし始めていった。
残念なことに、とてつもなく長い伝統を無くすことはそう簡単なことではなくて、依然として若いモーリタニア女性の中には「太りたい願望」をもつ人が少なくないらしい。
日本で殆ど違法な成分不明の痩せ薬が問題となっているのとは対照的に、モーリタニアでは危険な太り薬の流通が止まらない。 美しさを追い求めるのは本能的欲求の1つ。その究極な形をアフリカのイスラム国家の伝統に恐ろしくも生々しく探ることができる。
ラベル:
ガバージュフィーディング,
フォアグラ,
モーリタニア
場所:
イギリス ロンドン
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