たいらくんの政治経済。

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2015/08/10

英語を学ぶ意義 - なぜ英語を勉強しないといけないのか

英語を勉強しなさいという大人は多くても、何故英語を勉強しなきゃいけないか教えてくれる大人が以外と少ない
こんにちは。ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校法学部で犯罪社会学を学んでいる平(たいら)と申します。今日は、英語を学ぶ意義についてプレゼンテーションをしたいと思います。英語を学ぶ大切さを訴える人は決して少なくありませんが、実際のところ、何故英語を勉強しなきゃいけないかということを考えたことがある人はどのくらいいるでしょうか。

中学生や高校生の皆さんの中には、英語が得意という人も、また逆に苦手という人もいると思います。でも実際に、15年、16年と日本で生活をする中で、どうしても英語を使わないといけないという場面に遭遇した人がどのくらいいるでしょうか。あまりいませんね。近年、日本にも外国人観光客が大勢訪れていますが、あまり会話をする機会というのはないと思います。



あまり使う機会も習得する必要もなさそうな英語ですが、何故ここまで学校の先生や塾の先生、お父さんやお母さんは、口を酸っぱくして英語を勉強しなさいと言うのでしょうか。今日はそんな疑問に答えていきたいと思います。

まず簡単に自己紹介をしたいと思います。僕はイギリスの大学で勉強をし始めて今年で2年目を迎えました。一生懸命勉強した甲斐もあって、昨年の学期末試験で法学部トップの成績をとることができました。大学からは、総額520万円の返済不要の奨学金を頂いています。先程も述べましたが、僕は今、犯罪社会学という分野の勉強をしています。専攻は、国際的なテロリズムと刑務所の民間運営についてです。

勉強の他にも、色んな仕事もしています。昨年2月からロンドン大学キングスカレッジ校の国際安全保障研究センターで、主に日本の原子力科学技術についての研究と科学翻訳をする非常勤研究員の仕事を続ける中、母校からのオファーで広報担当官としてイギリス国内の高校に大学説明会をしに行ったり、入試課で働いたりもしています。他にも、こうした貴重な経験を通して得た知識や情報をもとに、今日こうしてプレゼンテーションをしているように、イギリス留学の魅力や効果的な英語の勉強法について講演する機会も頂いています。


結論を先に言ってしまいます。ロンドン大学で普段英語で講義を受けていたり、イギリスで仕事をしている身ではありますが、個人的には、英語を学ぶことは必ずしも重要なことではないと思っています。もっと言ってしまえば、英語の勉強だってしなくてもいいと考えています。


その理由は簡単です。日本で9年間の義務教育を修了して、3年間の高等教育を受けて、大学に行かずに職に就いて立派な実績を残している人も少なくありませんし、昔は中学卒で日本の総理大臣になった人もいます。今は就職も出世も厳しい世界なので、僕や皆さんのように大学受験を目指して日々の勉強に取り組んでいる人の方が多いかもしれませんが、それでも大学に合格するためには英語が話せるようになる必要は全くありません。

センター試験で話す力が問われることもありませんし、ほとんどの大学では、書く力も問われることはありません。もし、一般受験に不安であれば、学校の定期テストさえ頑張れば、推薦入試で有名な大学に合格することだってできます。

きっと皆さんの両親や先生方が皆さんに対して抱いている期待は高いと思うので、お父さんやお母さんに弁護士や医者になることを目指すように言われている人もいるでしょう。ところが、どんなに難しい国家試験や資格を持った士業を目指そうと思っても、ある程度英文が人並みに読めればいいのです。まして、ネイティブのように流暢に話すことなど要求されませんし、人事の人の大半も英会話はきっと得意ではないでしょう。人生において、何をもって成功とするとするかは、人それぞれ意見が違いますが、少なくとも周囲に尊敬されたり、注目を浴びるような仕事に日本で就こうとする上で、英語力はさほど重要ではありませんし、何なら英語を全く勉強しなくてもなんとかすることだってできます。


日本は、少子高齢化が進んできているとはいえ、世界で3番目の経済大国です。国際的な影響力は、とりわけアジアにおいては、強大な影響力を持っています。とても豊かで便利で過ごしやすい社会です。日本社会に生まれただけでも、皆さんは世界トップレベルの安全や教育、社会保障システムを享受することができるのです。日本がこれだけ素晴らしい社会であるがゆえに、英語力がなくても生活ができてしまいます。政治家にだって、弁護士にだって、医者にだってなれるのです。

それでは改めてお聞きします。それでもなお、英語を学習する理由とは何なのでしょうか。イギリスを含め、アメリカやオーストラリア等の英語圏の大学には、毎年何万人、何十万人という留学生が集まってきます。必死に英語を学ぼうと努力しているのです。日本も例外ではありません。一昔前よりも海外の大学で学ぶ日本人留学生の総数は減ってしまったかもしれませんが、それでも短期の語学留学や大学間の交換留学などはまだまだ盛んです。何故でしょうか。


それは、自分の可能性を広げる最も効果的な方法のひとつだからです。英語がどんなに話せない人でも、英語が話せることの良さはきっと理解してくれると思います。日本語だけでは日本語を理解できる人としかコミュニケーションがとれませんが、英語が理解できれば、もっと多くの人とコミュニケーションをとることができるようになります。仮に、皆さんがある企業の営業の仕事に就いたと考えてみましょう。日本語だけでは日本国内でしか働けませんが、英語ができれば、日本国内だけでなく、世界各地を飛び回ってその企業の製品やサービスのプロモーションをすることができますよね。つまり、英語ができるということは、英語ができないという人よりも多くの機会を得ることができるということです。たとえどんな仕事に就こうとも、英語ができれば、英語ができない他の社員よりも仕事の幅は広がりますし、これからの社会、こうした場面はますます増えていくことでしょう。

これを世間では、グローバリゼーション、もしくは国際化と呼んでいます。皆さんが僕と同じような年齢になるころには、さらにこの動きが活発化していることでしょう。日本の大学だけでなく、高校や中学校にも、同年齢の外国人学生が一緒に学ぶような環境になっているかもしれません。


少し話が変わりますが、皆さんインターネットは好きですか。好きな歌手の動画をみたり、アイドルの写真をみたり、わからないことを調べてみたりと、インターネットはとても便利ですよね。皆さんの大半はきっとラインのアカウントを持っていると思いますし、ツイッターやインスタグラム、フェイスブックをやっている人も少なくないかもしれません。

ちなみにですが、世界中のウェブサイトで使用されている言語比率がどのくらいかご存じでしょうか。今やほとんどの国でインターネットが使えるようになりましたが、世界各国のネットユーザーはどの言語を使って情報を手に入れているのでしょうか。

ある会社の統計データによれば、世界中のウェブサイトのうち、日本語を使用しているサイトは全体のおおよそ5パーセントだそうです。仮に世界に100個のウェブサイトがあったとすれば、そのうち5つのウェブサイトは日本語で書かれていることになります。これは比率で考えると、インターネットの世界での日本語のシェアは、世界全体の人口に対する日本語話者数の比率よりも多いことになりますね。日本語で書かれているサイトだけでも無数にあると思いますが、これが多いと考えるか、少ないと考えるかは人それぞれですね。

ただ重要なのは、英語の場合、この比率は55.5パーセントにまで跳ね上がるということです。これはつまり、インターネットの世界では、英語で情報を収集できれば、日本語だけで情報を収集できるよりも遥かに多くのデータにアクセスすることができるということです。何か知りたいことがあるときに、1つでも多くのサイトを見つけられれば、知識を深めることができますよね。サイトの数が多ければ、得られる情報の量も多くなるので、結果的にもっともっと知識を深められる可能性が高まります。



英語をうまく使いこなせるようになれば、日常生活での疑問を解決するために必要な情報をより多く集められますし、仕事でも成功するチャンスや出世するチャンスを増やすことができます。もしも海外旅行が好きであれば、もっと外国のことを楽しめるかもしれませんね。英語ができるようになる必要はありませんが、できれば楽しいことが増えるのは間違いありません。分からないことが分かるようになることや知らなかったことを新しく学ぶことは楽しいことですよね。これを好奇心と呼びますが、英語を学ぶことはこの好奇心を満たす上でとても重要な役割を果たしてくれます。

少し英語を勉強してみたいなと思ってきましたか。そういう気持ちになってくれれば嬉しいです。


ところが現実はそう甘くありません。世界各国の教育現場で英語教育が行われていますが、日本は、他の先進国や同じアジアの近隣国と比べて、英語の成績があまり芳しくありません。考えられる理由は様々ですが、これまで説明したように、あまり日本社会で生きていく上でそれほど英語が重要でないということや日本の高校や大学の入学受験で問われる英語力が、海外で過ごす上で必要な英語力のそれとズレがあるのも理由かもしれません。

実際、IELTSというイギリスのブリティッシュカウンシル等が共同で主催している英語能力テストの国別平均成績は、日本は香港や台湾、ベトナム等の国々に大きな差をつけられてしまっています。イギリスでよく、英語が最も苦手な国の留学生として挙げられる中国人ですが、彼らの成績と日本人の成績はほぼ同じだということが分かると思います。

日本人のスコアは総じて低いのですが、とりわけ低いのが書く力と話す力です。どちらも自分の考えや思いを英語で伝える上でとても重要なスキルですが、日本人は特にこの「相手に自分の考えを英語で伝えること」を苦手としています。英語が少し得意な人でも、実際に英文を書いてみたり、英語を話してみたりすることは全然できないという人は少なくありません。それも不思議なことではないです。今の日本の英語教育の場では、あまりこの二つの能力を測られることはされていません。むしろ、書いたり話したりすることが全くできなくても、普段の定期試験で満点をとることだってできてしまいます。同様な傾向は、韓国や中国でもみられます。


だからこそ、毎年多くの人々が英語圏の大学に留学するのです。英語の重要性を理解したうえで、自分が描く人生や目標にどれだけ英語力が関連してくるか考えると、具体的にどのレベルの英語力が必要になるか明らかになってきます。英語圏の大学に留学することは、自分に必要な英語力をバランス良く身につける最も効果的な方法になりうるのです。

英語圏の大学は、多くの日本の大学と違って、ディスカッションやプレゼンテーション能力をペーパーテストのスコアと同じように重要視しています。普段の授業を通して、自分の興味のある分野について考えを深めて、それを言葉にできるようにしたり、自分とは全く違う考え方をもった人と意見を交わすという毎日を送れば、少しずつですが着実に英語で自分の考えを表現できるようになるはずです。

もっとも、英語圏の大学に留学するためには、ある程度の英語力を留学する前の段階で身に着けておく必要があります。もっと現実的な話をすれば、留学は授業料だけでもとんでもない費用がかかります。英語を学びに行くための留学とはいえ、考えなければならないことはたくさんあります。それでは、具体的に英語力を伸ばす勉強法やいざ留学を考えるうえで考慮しておくべきこととはどのようなものでしょうか。それはまた別の機会でお話できればと思います。これからもイギリス留学や英語学習について様々な情報を発信していこうと思っていますので、質問がある人がどんどん連絡してみてください。ご清聴ありがとうございました。


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講師: Yuki Taira
経歴: ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校法学部犯罪社会学専攻、法学部首席授業料全額支給奨学生(学生大使)、ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校入試課勤務。ロンドン大学キングスカレッジ校国際安全保障研究センター非常勤研究員・日本語言語コンサルタント。ペンタゴンコンサルティングサービス・ディレクター。

本記事は、2015年8月10日に民放フォーリンスタディーズ社が主催するJCB夏休み英国短期留学プログラムに参加した日本各地の高校生50名を対象に、ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校法学部の講義室をお借りして行ったプレゼンテーションの内容を文章化したものです。

内容についての質問や、講演のご依頼は、ペンタゴンコンサルティングサービスまで。

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