たいらくんの政治経済。

BLOG

2014/04/28

日本メディアが赤だと言えば、韓国メディアは青だと言う



今月25日、 核セキュリティ・サミットに出席するためオランダのハーグを訪問している安倍首相が、在オランダ米国大使公邸において約45分間にわたってオバマ大統領及び朴槿恵大統領と日米韓首脳会談を行った。これまで安倍首相との首脳会談を拒否してきた朴政権としては大統領就任以来初の首脳レベルの会談となったが、ぎこちなさが残る3カ国会談は、改めて日韓間の溝の深さを際立たせた。 

国内メディアの多くは、「悪化する日韓関係の打開に向けた第一歩」などと前向きな評価しており、少なくとも北朝鮮問題解決に向けた日韓双方の連携の確認がとれたことには大きな意義がありそうだ。加えて、タイミングを見計らったように北朝鮮が中距離弾道ミサイル「ノドン」を日本に向けて発射したことで、皮肉にも今回アメリカが主導した3カ国首脳会談の最重要テーマである北朝鮮問題の深刻さを裏付ける結果となった。興味深いことに、今回の会談に参加した日米韓各国の大手メディアの報道内容は全く異なった視点に立っている。いくつか例を出してみよう。 

■朝鮮日報(韓国) 
"아베 총리, 박근혜 대통령에 한국말로 인사…“오바마 美대통령 오글오글" 
"安倍首相、朴槿恵大統領に韓国語で挨拶...「オバマ大統領もモジモジ」" 

■聯合ニュース(韓国) 
"한미일 3각 협력관계 복원되나…과거사 우려는 여전"
"韓米日、3カ国の協力関係は改善されるものの...過去の懸念は変わらず"

■聯合ニュース 日本語版(韓国) 
"米仲介で韓日首脳が初会談 関係改善へ道のり遠く"

■読売新聞 
"日米韓首脳会談 「北」の核放棄へ連携取り戻せ"

■朝日新聞 
"日米韓首脳が北朝鮮問題で連携確認、3カ国の軍事協力も協議"

■産経新聞 
"日米韓首脳会談 相違乗り越え連携強化を"

■WSJ(アメリカ) 
"Current Leaders of South Korea, Japan Meet for First Time" 
"韓国と日本の現職首脳が初会談" 

同じニュースでも見出しでこれだけ異なるのは面白い。もっとも、各国とも極端な記事内容を好むメディアが存在する以上、完全に各国メディアの傾向を捉えることは難しい。それでも、大量の読者や視聴者を抱える大手メディアの報道の仕方に注目すると、なかなか面白い特徴を見出すことができる。 

韓国メディアは、やはり安倍首相の言動や日本の外交方針にフォーカスした記事が多い。今回の会談では、論争の激しい歴史問題や慰安婦問題などは言及されなかったものの、多くの記事では「戦争犯罪」や「慰安婦」などといった語句が含まれている。ちなみに、前出の聯合ニュースは、自国のページでは、「아베, 서툰 한국어로 "만나서 반갑스무니다"安倍、不器用な韓国語で"お会いできて嬉しいです"」という見出し。"서툰"は、下手とも不器用ともとれる比較的否定的な意味合いの強い単語だ。 

日本メディアは、今回の3カ国会談を冷え込んだ日韓関係の改善に向けた一歩として肯定的に受け取るケースが殆どだった。韓国メディアの多くでみられた安倍首相の韓国語挨拶は日本メディアでは殆ど取り上げられず、代わりに会談後に安倍首相が述べた「未来志向の日韓関係に発展させる第一歩にしたい」という一言をそのまま引用している。この「未来志向の日韓関係」という言葉を記事内に取り入れた韓国メディアはひと通り確認したところ1つもなかった。片方のメディアで盛んに用いられた語句が、もう一方のメディアでは全くみられないといった現象は日韓のメディアではよくある現象だ。 

最後に、アメリカのメディア。アメリカでは、今回の会談を淡々と3カ国首脳が述べたことを直接引用した上で、会談の主要なテーマが北朝鮮の核問題であることに言及している。ちなみに、イギリスのBBCは、"US brings together Japan and S Korea leaders after rift"という見出し。深刻な状況に陥っていた日韓首脳のデートをアメリカが設定した感じ、というと言い過ぎかもしれないが、少なくとも今回の会談にアメリカが果たした役割を多少なり肯定的言及している。これについては日韓メディアとは異なった傾向だ。どちらかというと韓国のほうがこの傾向が強いが、今回の会談をオバマ大統領によるお節介に近い捉え方をしている日韓メディアは少なくない。 

客観的にみて、歴史問題を含む外交問題でこれまでにないほど明確な対立関係を築いてしまっている現在の日本と韓国の関係を修復することは簡単なことではない。日本メディアの多くが、韓国を重要なパートナーとして位置づけ、北朝鮮問題を含む東アジア情勢の改善に不可欠とみていることは重視すべきだが、今回の会談はその第一歩というにはあまりにも内容のない会談だった。日本メディアとは内容がほぼ真逆といって良いほど異なる韓国メディアを読み解くと、韓国の世論形成の在り方や実質的な認識がどのようなものであるか多少なり理解することができる。 

時間があれば、なぜ韓国がこれほどまでに対日感情を激化してきているのかその原因について書いてみたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿