たいらくんの政治経済。

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2014/04/28

韓国の反日路線は新たな防衛戦略の要



朴槿恵大統領率いる韓国の現行政権が明確な反日路線に舵を切り、次なる錨地である北京へと船を動かし始めた。オランダのハーグで開催された核セキュリティ・サミットに合わせて事前に行われた中韓首脳会談では、仁川国際空港で行われた中国人民志願軍の遺骨の引き渡し式やハルビンに建設された安重根義士記念館設置に対する双方の謝意が示され、両国の結び付きを強調する発言が続いた。

安倍首相との会談を就任以来拒絶してきた朴槿恵大統領。その一方で、習近平国家主席との距離はこれまでにないほど近付けている。朴政権の一連の動きや発言を精査すると、韓国が描く長期的な防衛戦略が見えてくる。

韓国の国防予算は、ここ10年余りで急激に増加してきた。2002年には約16兆3000億ウォンだった軍事予算は12年には約35兆2000億ウォンと倍増。不安定な朝鮮半島情勢に対応するために、最新の戦闘機やミサイル、K2戦車に加えて、イージス艦の整備まで進めた結果、韓国はアジア5位の軍事大国となった。韓国にとって最も重要な戦略的パートナーであるアメリカが軍事予算の縮小を進める動きに対応する形で軍拡を進める韓国。今年1月には、撤退案さえあった在韓米軍の規模を維持するために韓国政府がさらなる思いやり予算への予算投入に合意している。

日本との友好関係を樹立するという政治目標の優先順位を下げ続ける韓国の真意とは何か。仮に、朴政権を含めた歴代政権が悲願としてきた南北統一や韓国の安全保障の最大化という2つを朴政権の最優先事項とすれば、韓国の中国シフトという動きを多少なり理解することができそうだ。

日米韓3カ国首脳会談を牽制するために中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射した北朝鮮は、韓国の中国接近について明確なスタンスを示していない。当然ながら、孤立している北朝鮮の唯一の盟友である中国の国家主席に泥を塗るようなことはしたくない。韓国は、北朝鮮にとって最も重要な国である中国に上手く接近することで独自の防衛戦略を確立しようとしている。韓国貿易協会の公式資料によれば、既に韓国の対中貿易額はアメリカと日本との貿易額を合わせた額よりも多く、全体の3割近くを占める。韓国の得意とするスマートフォンや自家用車、家電等の一大消費地である中国との友好関係の樹立は、韓国経済を支えていく上で、今後更に不可欠な要素となる。もっとも、その重要性は経済面に限らない。

急激な軍拡を進める核保有国の中国と安定した外交関係を結ぶことにすれば、同様に中国に依存している北朝鮮との距離を縮めやすくなる。中国にとっての韓国の存在が、韓国側と同レベルに重要なものとなれば、北朝鮮の軍事的な拡大意欲を中国側からの助力によって有利にな形で抑えることができる点も見込んでいるのだろう。事実、朴政権は28日、北朝鮮に対し、南北住民の人道的問題の優先的解決、南北共同繁栄のための民生インフラの構築、南北住民間の同質性回復の3大構想を提案している。これに加えて、朴槿恵大統領は、オランダの公共放送会社であるNOSのインタビューに対し、国連北朝鮮人権調査委員会の最終報告書について、中国が安保理で拒否権を講師しないことを望むと表明している。これは、韓国側の対北政策に対して、中国側がどのように出るのかを試す意図もあると見れそうだ。

強硬な対米路線を示す北朝鮮との話し合いの場を早期に築くとすれば、このまま韓国がアメリカや日本との関係を強化するよりも、中国との距離を縮めた方が現実的だ。それに、中国にとって韓国が特別な存在となる上で必要なカードも韓国側は既に持っている。それが、「反日」というわけだ。

膨大な人口をコントロールする上で、中国共産党にとっての反日は、韓国内の世論操作と全く同様の効果を持つ。共産党としても、韓国側が反日路線のカードを持って接近してくることは、まさに「痒い所をかいてくれる存在」とみえるだろう。歴史的な背景から、韓国側がアメリカや日本と直接的な軍事対立に至ることは考えられない。こうした状況を踏まえて、対日路線という共通の利益をもとに中国に上手く接近することに成功すれば、不安定化する東アジア情勢の中で韓国の国益を最大化することができる。それは、単に防衛や貿易、外交といった範囲に留まらない、韓国にとってこれまでにないほど重要なものとなるだろう。

国益の最大化を求める韓国の外交に、日本はどのように対応できるだろうか。韓国にとって、外交カードとしての意味合いが強い慰安婦や戦後賠償の問題に、正論をもって反論をするだけでは、中国や韓国の政府が苦心している国民の世論操作を意図しない形で寄与する結果となってしまう。一歩先の外交政策をとるとすれば、今の日本には他国の長期的な戦略を踏まえた「更なる超長期的戦略」が必要となる。

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